ワクチンの普及とともに百日咳の患者数が減少したため、百日 ..


・百日咳は予防接種の効果が長期間持続しないため、学童や成人での発症が増加している。重症になりやすい乳児への感染も現行の予防接種体制では十分防ぐことができておらず、死亡例も報告されている。


百日咳 | 阪大微研のやわらかサイエンス 感染症と免疫のQ&A

・定期接種のスケジュールに加え、日本小児科学会は5-6歳、11-12歳での任意接種による追加を推奨している。しかし、海外で同様の対策をしている地域の報告を見ると、百日咳ワクチンの追加接種対象を広げるだけでは流行を抑えきれず限界がある。早期乳児への感染対策としては、妊娠後期の妊婦への予防接種が最も効果が高いというデータが蓄積され、海外ではこれを導入する国が増えている。

百日咳菌(Bordetella pertussis)は、主に呼吸器感染症を起こす小型のグラム陰性桿菌である。ごくまれに菌血症を起こすこともある。類縁の細菌として、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)やBordetella holmesiiがあるが、百日咳菌に比べると百日咳毒素産生がなく、より軽症である場合が多い[1]。

第82回 熱のない長引く咳は百日咳かも・・・ 2010/6/20

百日咳は1940年代ごろまでは多くの感染者、死亡者を出す疾患であったが、1950年に予防接種が導入され、1968年には全細胞型3種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳)の定期接種が開始されて患者数は激減した。しかし、1975年にワクチン接種後の死亡事例があり、百日咳ワクチンによる脳症が原因と考えられたため、一時中止された。数か月後に接種時期を引き上げて再開されたが接種率は低く、1979年には百日咳の報告が年間約13,000例、死亡数が約20例以上と増加してしまった。1981年には副作用の多かった全細胞ワクチン(whole cell vaccination)から日本で研究・開発された無細胞ワクチン(acellular vaccination)に変更され、3種混合ワクチンの接種率は改善し、再び百日咳の発症は減少へと向かった[2]。

しかし、2000年以降になってから、百日咳の局地的な流行が散発するようになった。百日咳の予防接種は4~12年で効果が減弱するため、思春期や成人での発症が相対的に増加した影響と考えらえる。最大のアウトブレイクとしては、大学で学生や職員約300人に感染が拡大した事例がある[3]。日本のみならず世界的にも発症年齢が上昇する傾向が見られた。

抗生剤(抗菌剤)の適正使用 (後編) | みうら小児科クリニック

百日咳の増加に伴い、リスクの高い乳児の重症例が報告されている。東京都立小児総合医療センターの2010年3月~2018年11月の百日咳のデータ集計によると、百日咳患者131例中73例が入院症例で、重症が43例(年齢中央値3か月)、死亡が3例であった[4]。

日本でのサーベイランスは、以前は5類小児科定点把握疾患で成人の報告が少なく、届出基準が臨床症状のみでの判断であったことから、百日咳の正確な発生動向を把握することが困難であった。2018年に百日咳は5類全数把握疾患となり、LAMP法など新たな検査が開発されたことを受けて、届出基準も「臨床症状と検査陽性」または「臨床症状と百日咳患者との接触歴」を満たすことに変更され、より広くかつ正確な状況把握ができるようになった。

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5類全数把握疾患となってからの2018年1月1日~2018年9月30日までの百日咳のデータの集計が、国立感染症研究所から発表されている[5]。この期間で報告された症例の中で届出基準を満たしたものは6,443例であった。そのうち、5歳から15歳未満までの学童期の小児が65%で、6~9歳が特に多かった。重症化のリスクのある6か月未満児は5%、30~50代の成人は14%であった。乳児期の4回の予防接種を完遂できている症例が多く、特に5~15歳未満の約8割で予防接種が行われていた。また、6か月未満の患児では家族(同胞、両親)からの感染が多かった。この結果からは、特に学童期での追加接種が、社会全体への高い予防効果をもたらすと考えられる。

また、5類全数把握疾患となった直後でもあり、医師が百日咳と診断しても届出義務があると知らずに報告していないケースもあると予想される。


激しい咳が徐々におさまり、発症後2か月から3か月で回復します。 治療・予防

カタル期に抗菌薬を開始すると咳症状は軽減するが、百日咳患者との接触や周囲での流行などの情報がないと治療開始の判断は難しい。家族に乳児がいるなどのリスクがなければ、抗菌薬適正使用の観点からも安易な処方は慎みたい。痙咳期での抗菌薬は本人の症状の改善にはつながらないが、周囲への感染拡大を抑制する。抗菌薬を開始して約5日で菌は陰性化する。回復期は抗菌薬の投与は不要である。

抗菌薬第1選択はアジスロマイシンまたはクラリスロマイシンで、第2選択はST合剤である[18]。生後1か月未満の乳児ではアジスロマイシンを使用する。エリスロマイシンは乳児肥厚性幽門狭窄症のリスクがあるが、同じマクロライド系のアジスロマイシンで乳児肥厚性幽門狭窄症が増加するかどうか厳密には結論は出ていない。ただ、エリスロマイシンほど関連性はないと考えられており、必要な場合にはためらわずに使用する[19]。ST合剤は、新生児や低出生体重児で黄疸のリスクがあるため、生後2か月以降で使用する(表3)[20]。

百日咳については、特異的な臨床症状はないことから、臨床症状のみ ..

アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)では、百日咳に曝露した際の予防内服(postexposure antimicrobial prophylaxis: PEP)を患者と同居している家族、高リスク群(乳児、妊娠後期、免疫不全、中等度から重度の喘息)、高リスク群と密接に接触する人に推奨している[21]。実施する場合は、曝露後21日以内に治療と同じレジメンで行う。

何が最優先か業務中にもスタッフ間で日々声掛けし、確認を行っていく ..

1999年4月施行の感染症法では「百日咳」として定点把握疾患に分類され、全国約3,000の小児科定点から報告されており、2001~2006年は0.44~0.73であったが、2007年には0.97に増加し、2008~2012年は1.30~2.24であった。2013年には0.53と減少したが, 翌2014年から増加傾向を示している(0.66~0.95)。近年の患者増加の特徴として小学校高学年以上の患者が多くなっており、2016年は小児科定点からの報告ではあるものの、15歳以上の患者が全体の25%を占めた。そこで、より正確な百日咳の疫学の把握を目的として、2018年(平成30年)1月1日から、それまでの小児科定点把握疾患から成人を含む検査診断例の全数把握疾患としての改正が施行された。

外【効】気管支喘息、百日咳に基づく気管支痙攣の緩解、局所麻酔薬の作用延長

グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染によるが、一部はパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)も原因となる。感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染、および接触感染である。
百日咳の発症機序は未だ解明されていないが、百日咳菌の有する種々の生物活性物質の一部が、病原因子として発症に関与すると考えられている。病原因子と考えられるものとしては、繊維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(69KD外膜蛋白)、線毛(Fim2、Fim3)などの定着因子と、百日咳毒素(PT)、気管上皮細胞毒素、アデニル酸シクラーゼ、易熱性皮膚壊死毒素などの毒素がある。

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・白血球数
白血球数は正常~軽度上昇を認め、分画ではリンパ球が上昇していることが多い[16]。乳児では白血球数30,000/μL以上と重症化に相関を認めた[17]。

通常、成人は1回主成分として10~20mgを1日3回服用します。小児は1回 ..

百日咳は散発的な流行を繰り返し、現行の予防接種では乳児の重症百日咳の予防が十分できていない。今後、学童期や思春期だけでなく、妊娠後期での予防接種追加を含めた予防接種スケジュールの見直しをはじめとする対策が必要である。

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現時点でできることとして、慢性咳嗽や咳の程度が強いときには百日咳を鑑別に挙げることを忘れないようにしたい。特に乳児への感染を防ぐためには、病歴聴取の際に乳児と同居しているか、乳児と身近に接する職業かをルーチンで確認し、乳児への感染源となりやすい同居家族、保育士、教師、医療従事者などでは百日咳の検査や治療の閾値を下げることが望ましい。

また、百日咳には上述してきたような多くの課題があること、5類全数把握疾患となり届出義務があることを特に小児科以外の医師にも周知し、百日咳が小児だけの問題ではないという認識を様々な診療科の医師が共有することも重要である。

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百日咳は世界的に見られる疾患で、いずれの年齢でもかかるが、小児が中心となる。また、重症化しやすく、死亡者の大半を占めるのは1 歳未満の乳児、特に生後6カ月未満の乳児である。WHOの発表によれば、世界の百日咳患者数は年間約1,600万人で、その約95%は発展途上国の小児であり、小児の死亡数は19.5万人にのぼるとされている。
わが国における百日咳患者の届け出数(伝染病予防法では届出伝染病として全例報告されることになっていた)は、ワクチン開始前には10万例以上あり、その約10%が死亡していた。百日せき(P)ワクチンは1950年から予防接種法によるワクチンに定められ、単味ワクチンによって接種が開始された。1958年の法改正からはジフテリア(D)と混合のDP二種混合ワクチンが使われ、さらに1968(昭和43)年からは、破傷風(T)を含めたDPT 三種混合ワクチンが定期接種として広く使われるようになった。これらのワクチンの普及とともに患者の報告数は減少し、1971年には206例、1972年には269例と、この時期に、日本は世界で最も百日咳罹患率の低い国のひとつとなった。しかし、1970年代から、DPTワクチン、特に百日せきワクチン(全菌体ワクチン)によるとされる脳症などの重篤な副反応発生が問題となり、1975年2月に百日せきワクチンを含む予防接種は一時中止となった。同年4月に、接種開始年齢を引き上げるなどして再開されたが、接種率の低下は著しく、あるいはDPTではなくDTの接種を行う地区も多く見られた。その結果、1979年には年間の届け出数が約13,000例、死亡者数は約20例に増加した。
その後、わが国において百日せきワクチンの改良研究が急いで進められ、それまでの全菌体ワクチン(whole cell vaccine)に代わり無細胞ワクチン(acellular vaccine)が開発された。1981年秋からこの無細胞(精製、とも表現する)百日せきワクチン(aP)を含むDPT三種混合ワクチンが導入され、その結果、再びDPTの接種率は向上した。また、1981年7月から「百日せき様疾患」として、定点医療機関(以下、定点)からの報告による感染症発生動向調査が開始され、伝染病予防法に基づく届出数の約20 倍の患者数が報告されるようになった。1982年には全定点からの報告数が23,675(定点当たり12.59)で、その後は約4年毎に増加するパターンを示しながら減少した。さらに1995年4月からはDPTワクチンの接種開始年齢がそれまでの2歳から3カ月に引き下げられた。

百日咳やマイコプラズマ肺炎などの呼吸器疾患に多く用いられるほか ..

臨床経過は3期に分けられる。
1)カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなる。
2)痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳(痙咳)となる。これは短い咳が連続的に起こり(スタッカート)、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出る(笛声:whoop)。この様な咳嗽発作がくり返すことをレプリーゼと呼ぶ。しばしば嘔吐を伴う。
発熱はないか、あっても微熱程度である。息を詰めて咳をするため、顔面の静脈圧が上昇し、顔面浮腫、点状出血、眼球結膜出血、鼻出血などが見られることもある。非発作時は無症状であるが、何らかの刺激が加わると発作が誘発される。また、夜間の発作が多い。年齢が小さいほど症状は非定型的であり、乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止と進展することがある。合併症としては肺炎の他、発症機序は不明であるが脳症も重要な問題となり、特に乳児で注意が必要である。1992~1994年の米国での調査によると、致命率は全年齢児で0.2%、6カ月未満児で0.6%とされている。
3)回復期(2, 3週~):激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなるが、その後も時折忘れた頃に発作性の咳が出る。全経過約2~3カ月で回復する。
成人の百日咳では咳が長期にわたって持続するが、典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく、やがて回復に向かう。軽症で診断が見のがされやすいが、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要である。これらの点から、成人における百日咳の流行に今後注意していく必要がある。
また、アデノウイルス、マイコプラズマ、クラミジアなどの呼吸器感染症でも同様の発作性の咳嗽を示すことがあり、鑑別診断上注意が必要である。
臨床検査では、小児の場合には白血球数が数万/mm3に増加することもあり、分画ではリンパ球の異常増多がみられる。しかし、赤沈やCRPは正常範囲か軽度上昇程度である。

上限 600mg)やクラリスロマイシン(1日あたり15~20mg 分2経口,7日間投与,

百日咳菌に対するIgM抗体、IgA抗体が2016年に保険収載となった。いずれもワクチンの影響を受けないため単回で診断可能である。IgM抗体は発症15日、IgA抗体は発症21日がピークで、IgA抗体がIgM抗体よりも陽性期間は長い[15]。結果は、陰性、判定保留、陽性のいずれかで報告される。判定保留の際は、発症後早期であれば2-3週後に再検査、あるいはLAMP法で検査を行う。

エリスロマイシン 25~50mg/kg/日 分4 14 日間経口投与

百日咳の病原体検査には菌培養、血清学的検査、遺伝子検査がある。菌培養検査は特異性に優れるが特殊な培地、ボルデ・ジャング(Bordet-Gengou)培地やCSM(cyclodextrin solid medium)などの特殊培地を要する。菌培養が陽性であれば確定診断となるが、感染時の保菌量が多いとされる乳児患者でも菌分離成功率は60%以下と低く、ワクチン既接種者や菌量の低い青年・成人患者からの菌分離はより困難である。菌はカタル期後半に検出されることが多いが、痙咳期に入ると検出され難くなるため、実際には菌の分離同定は困難なことが多い。